2019/08/07

芸能山城組2019(前編)

 80年代当時に未来を描いたSF作品二つが奇しくも同じ“2019年”を舞台設定にしていた事で改めてフィーチャーされているが、その一つが『ブレードランナー』で、もう一つが『AKIRA』である。どちらもサイバーパンク作品で、その後の映画やアニメーションに多大な影響を与えている。現実の2019年では警察車両ですらまだ空を飛ばないし高知能なレプリカントも居なくて、健康優良不良少年達のバイクだってあんなにカッコいいフォルムではない上にネオ東京というには東京はまだまだ垢抜けない。

 そんな2019年の初夏に何となくアニメーション版『AKIRA』を観直して、芸能山城組の『Symphonic Suite AKIRA』(モーションピクチャーからのいわゆるサウンドトラックにはセリフが入ってて曲を繋いで長尺にしてるけど、こちらは純粋に楽曲のみ一曲ずつ入っている)も聴き直したりしていると、ふと『AKIRA』のこの音楽を手掛けた芸能山城組は果たして今何をしているんだろう?と思い、自分が持ってる他の音源『恐山/銅之剣舞』は76年の作品だし(夜中に聴くと怖いシリーズに分類)、『芸能山城組入門』も88年のリリースなので、近年の活動を全然知らなくてネットで検索してみたらWikipediaに項目があって「民族音楽を主題にしたオケツ集団であり」と書かれており、オケツ?おケツ?尻?はて??と訝りながら更にホームページを覗くと、ますます怪しい…というより何が何だかよく解らない。しかし現在も活動をしている模様で、新宿ケチャまつりというものを運営しているようである。ケチャまつりってそういえば聞いた事あるなぁ〜なんてボンヤリ思いつつ文字量の多いホームページを巡っていると、一緒に活動に参加出来る人を募集している。年齢・性別問わずと。そんな誰でもイケちゃうもんなの!?だってAKIRAの音楽の人達でしょ!?しかし随時説明会などをしていて扉は開かれているようである。だが「原則として音楽・芸能を職業とされている方はご遠慮いただいております」との事で、う〜む…自分はDJやったりたまに役者やったりしてるけどそういうのはどうなんだろ?と思いつつも『芸能山城組入門』に入っている合唱が好きだったので、合唱やりた〜い!という単純な動機で説明会に申し込み。一応自分がやってる活動も書き添えて、それでダメだったら仕方ないやくらいの気持ちで。

 説明会に来て下さいとのメールを受け東中野駅で待ち合わせ。組員の人がチラシを持って立ってますとの事でなんだか怪しい宗教の勧誘とかだったらどうしよ〜、でも僕、宗教にすら誘われない人間だから大丈夫!と気を強く(?)持って駅で待っているとチラシを持った人が。しばらく様子を窺って他の説明会参加者がチラホラ集まり始めたタイミングで声を掛ける自分の人間不信さよ。
 引率者と参加者とで列になって東中野をテクテクと住宅街へ歩くと一棟の建物が。どうやらここが芸能山城組の事務所のようである。こざっぱりした事務室に通されてパイプ椅子に座る。山城組って絶対無精ヒゲで髪も伸び放題の山伏っぽいルックスの人達が常にあぐらで輪になってひょうたんに入った日本酒飲みながら話してるイメージだったけど全然違った。

 説明会の詳しい内容はここでは省いちゃうけど、作曲家である芸能山城組の組頭・山城祥二氏は科学者の顔も持っていて、近年のハイレゾ音の元になる「ハイパーソニック・エフェクト」と氏が名付けた、耳には聴こえない域の高周波(CD規格ではどうせ耳で聴こえないんだからとカットされている)が実は体や精神に多様な影響を与えていて、しかもその高周波を人間は耳からではなく皮膚で感じている(!)という事などを研究しており、オリジナルのスピーカーも開発していて、新宿のNEWoManにはそのスピーカーが設置されててハイパーソニックが体感出来るようになっている(スピーカーの緑のランプが点灯している時にハイパーソニックが出ているとの事!)などなど知らない事ばかりで面白かった。というのも最近自分が音楽というよりもっと根源的な「音」や「響き」に興味を持っていたので(人間の声の共鳴にも興味があるので合唱をやりたいのです)ちょうどいいタイミングだったのもあり、なかなか楽しく説明を聞けた。
 諸々の説明の後にはガムランを叩ける体験コーナーもあり、コンパクトながら充実した説明会だった。

 しかしこの時はまだ自分がケチャまつりに参加し、ケチャをやる事になるとは夢にも思ってなかったのである…!続く。