たまに映像でも俳優業みたいな事もしているんだけど、そうは言っても所詮は底辺イロモノ役者でしかない河原乞食風情もいいとこなので、一度くらい普通の人の役とかやってみたいなぁ~なんてボンヤリ思っていても、来る役来る役ヤンキー、ジャンキー、オカマにオタク、果ては企画書に「謎の地球外生命体」としか書かれていなくて当日撮影に行ったら真冬の廃墟スタジオで全裸に前張りだけして全身黒塗りの上にローションを頭から被ってヌルヌルになり、待ち時間も黒塗りなので座れず前張りでトイレも行けず、外気と同じ気温で極寒の中ただでさえ裸で寒いのに冷たいコンクリートの上で四つん這いになってのたうち回ったりした挙げ句ローションを浴びると気化熱で一気に体温が奪われ文字通り歯がガチガチと鳴って、あぁ人間て寒いとホントに歯が鳴るんだなぁ…なんてしみじみ思ったりしながら、もちろん暖房も用意してもらってたんだけど暖を取ったら取ったで体表のローションが乾いて突っ張って顔が変形するほどに。一体何のプレイだよ!?ともう笑うしかない現場だったりと、それはそれは過酷で「普通」の俳優さんが味わう事がないであろう恥辱に堪えてこなしてきたワケだけど、不思議とそういったハードルが高ければ高いほど燃えてしまうのでこれはもう根っからのイロモノ気質なのであろうから仕方がない。
でもイロモノ役ってけっきょく見た目勝負でラクでしょ?と思われがちだけど、実は普通の役柄より難しいと思う。
見た目やキャラ設定などはブッ飛んでて現実離れしてなきゃいけないのはもちろん、更にその上で役としてのリアリティや説得力を持たせないといけないからだ。
これが例えば自分の等身大に近い設定だったらその振り幅も狭くて済むのだが、振り幅が大きくなればなるほどきちんと説得力を持たせないとそれこそ上辺だけになってしまう。
高く遠くに跳ぶためには、ただ普通に跳ぶよりも更に助走が必要になるのである。だからこその跳べた時の達成感・満足感。
そんなイロモノ役者の憧れであり一度は通っておくべき道、ザ・ヤクザ役。先日念願叶ってヤクザデビューしてきた。
情報解禁日まで詳しくは語れない上、何やらメディアミックス型の壮大なプロジェクトだそうで情報解禁自体ももしかするとだいぶ先になるかもだけど、もともとその関連の撮影に総勢100人ほどのカラーギャングの一員として、やれ刺青だ、やれモヒカンだっていう悪い子ちゃんだらけの中に混じって「健康優良不良少年」(おじさんだけど)してきたところ後日また悪人オーディションがあって、さすが悪人オーディション、エントリーシートにタトゥーの入ってる部位まで書かされるという(笑)
見た目だけの選考かと思ってたらまさかの演技やアクションのテストもあってみんなでアワアワしながらまぁそれはそれで楽しんでやってたら、その場で呼び出しを食らいスケジュールを訊かれて見事ヤクザ役ゲット~!カラーギャングからヤクザに昇格という極悪シンデレラストーリー。
セリフもあるし今後ドラマや映画に展開するかも?って企画で(僕がそこまで関わるかは不明だけど)、同じヤクザサイドの共演者も『アウトレイジ』や『クローズZERO』とかに出てるちゃんとした俳優さん達なので気合い入れるためにとりあえず眉毛全剃りして、先日まずはアクションシーンのみの撮影に行ってきた。
アクションて言っても僕ね、中学の柔道の授業で投げられたら骨が折れたくらいですからね!
現場着いたら救護室があったり看護士さん居たりでビビりまくりだったけど、僕のアクションの段取りはコケて蹴り入れられるだけっていうショボめのもので一安心!オーディションの時にも自分のひ弱さをアピールしといたんで多分気を遣ってくれたんだと思います。言っとくもんだね!
とは言っても他のアクション俳優さん達はワイヤーでふっ飛んだり壮絶でヒェ~!って感じだし、カースタントも凄くて観てる分にはメチャクチャ楽しいから自分の出番じゃない時も見学させてもらってた。
そうやってアクションやスタントシーンを観てると、やっぱ体の動く人っていいなぁ~と思う。言葉の演技の限界を思い知らされるっていうか、肉体の説得力。単純に男子目線でカッコイイっていうのもあるけど。
でもやっぱりプロの人達なので安全第一、ピリッとした緊張感もあってそれが心地よかった。
設定上、僕が車を運転するシーンもあるんだけど僕は運転免許を持っていないので代わりにカースタントの方が僕に扮装して運転してくれました。
って言ってもドリフトとか免許持ってても普通出来ねぇっつーの!!!
このカースタントマン、味のある顔のおっちゃんで、僕の髪の長さに合わせてロン毛のカツラを被らされてたんだけど、それでタバコ吸ってる姿がすっごい渋くてヒッピーみたい!とか言ってたら、西部警察やあぶない刑事なんかのスタントもやってる日本のカースタント界の第一人者だった。ヒッピーとか言ってゴメンナサイだけど、日焼けした肌とイイ感じに刻まれたシワがカッコ良くて、何でもその道の第一線の人ってイイ顔してるんだな~と思った。
映像の現場は演劇と違って稽古や役作りの期間が充分にあるワケでもないし、よく解らないまま放り込まれてハイ本番!なんて事もあるので、その短い時間の中で自分に何が求められているのかを瞬時に嗅ぎ取って実行しないといけないから集中力と瞬発力が必要で、大勢のプロのクルーに囲まれて自分がNGを出したらそこで流れが止まってしまうし迷惑がかかるという緊張感と責任感から、自分のスイッチの切り替え速度や神経をギュッと濃縮する技術が嫌でも養われて、これは後々演劇の現場でも役に立って、以前はエチュード(大まかな設定だけ与えられてあとは即興での演技)とか苦手だったけど、とりあえず自分が動かなきゃ始まらないという気持ちでパッと恥を脱ぎ捨てて動けるようになったからな~。(単に歳取って図太くなっただけかもだけど。)そういう意味で慌ただしい映像現場から学ぶ事も多々あり。
同じヤクザ役でもう1回撮影がある予定なので楽しもうと思う。
なので今月は眉毛がありません、というお知らせでした。