2014/06/21

アニマルホイホイ

 最近どうも哺乳類に好かれる。

 以前、夜道を散歩していたらどこからともなくダックスフントが飛び出してきて足元にじゃれてきた事があった。
毛並みの良さや、何より首輪をしているので飼い犬であろう、しばらくすれば飼い主が「どうもすいませ〜ん!」なんてヘラヘラしながら登場するだろうと思っていたが一向に現れない。

 こんな夜中に飼い主のいない飼い犬がなぜ?と不審に思いつつもその場を去ろうとするも楽しそうに足元からまとわりついて離れない。
「ダ〜メ!」と言ってみても通じるはずもなく、仕方ないので隙を見て走って逃げようとしたら、遊んでくれてると思ったらしく嬉しそうに尻尾を振って追いかけて来る。
そんな事を何回も繰り返し、同じ遊びを何度でも面白がる子供のように無邪気に駆け寄ってくるもんだからこっちが疲れてしまい、とうとう根負けした。

 きっとなんらかの原因で飼い主からはぐれてしまったのであろう、とりあえず連れて帰るわけにもいかないので交番まで一緒に行く事に。

 歩き出すときちんと横に並んで速度を合わせ短い脚でチョコチョコと付いて来る。よく飼い慣らされているようだ。
信号待ちで止まる度に顔を見上げてこちらを見つめてくる。その黒い、ビー玉のような瞳。従順な態度。

 普段はほぼ爬虫類にしか心を開かない僕でもさすがに可愛いと思ってしまう仕草。胸キュン☆である。

 そうして1人と1匹の珍道中、ようやく交番まで辿り着き、巡査に声をかける。
真夜中の訪問に怪訝な顔で「どうしました?」と訊かれ、「犬が付いてきちゃって…。」と我ながら頼りなく答える。不思議ちゃんか俺は。

 犬の方をチラリと覗き込む中年巡査。その瞬間に顔色が変わり、わざわざポリスボックスから出て来て犬を抱き上げ、猫なで声で(犬だけど)「ん〜?どうしたの〜?お前どこから来たんだい?ん〜?ん〜?」と孫でもあやすかのような激甘っぷり。
犬を抱いたまま交番内へ戻り、外でポツンと立っている僕の事なんかもうお構いなしにどこかへ連絡している。
明らかに嬉しそうに「では、預かります」と言うもんだからそうしてもらって帰宅。
別れの際も楽しそうに尻尾を振っていた。

 そして先日は今度は猫に好かれ、これまた夜中の散歩中に猫が前を歩くので付いて行ってみると逃げる気配もなく、少し先に行っては止まりこちらを振り向くといった様子。
これはどこかに誘導されているのではないかと好奇心から後を追う。

 しばらく付いて行くと公園の小高い丘の上でストップした。どうやらここに来たかったらしい。
相変わらず逃げる気配もなく、かといって近寄って来るでもないのだが、試しにこちらから近付いて背中を撫でると気持ち良さそうに背伸びをする。

 家の近所にも1匹、人懐っこい猫が居て、通りがかると近寄って来て、わざと背伸びをしたり足元にじゃれて来たりするので、くすぐってやるとゴロンとお腹を向けて甘えてくる。
普段はすました顔をしてこの媚びっぷり。ツンデレの極致である。

 なのでこの猫もその類いの、人見知りしないタイプなのだろう。首輪はしてなかったが飼い猫なのかもしれない。
肩の辺りを揉んでやるとウットリと目を細め地べたにうずくまる。
そうしてしばらく愛撫してやる中、他の人が通っても全く動じず時たま尻尾を振るくらい。

 ならば抱っこしてやろうと膝に乗せるもそれは落ち着かないらしく、スルリと逃げては体をスリ寄せながら僕の周りを回ったり佇んだり。指を通る毛並みでこちらも気持ちが良く、全身をくまなく撫でてやる。

 月夜の下で静かに虫が鳴く中、どのくらいそうしていただろうか、ここでも1人と1匹は無言の意思疎通を交わす。

 ふと、何のきっかけがあったワケでもなく立ち上がった猫はどこかに姿を消した。

 たまには人間にも好かれたいと思った夜だった。