ふとした路地の片隅で女性が立ったままパンを食べていた。
こうした光景を何度となく見ている。
女はなぜ街角でパンを食べるのか?
通勤の途中だろうか肩からバッグを掛け、申し訳なさそうに道の端に小さく寄って丸いパンをかじっている。
きちんと食事を摂る時間がなかったのだろうか?
しかしそこに立ち止まって食べる時間があるなら家でも食べられるだろう。
そして買い食いや食べ歩きの類でもなく、家から持ち出したパンである可能性が高いのである。
なぜパンなのか?
街角で女が食べている物がパンである確率は非常に高い。
これが例えばおにぎりではいけないのか?
米の塊だと何となくがっついているようで恥ずかしいという女性特有の感性からなのか?
じゃあ喰うなよ!とも思うがそうもいかないのだろう、空腹は誰にでも訪れる。
しかし男が道端で立ち止まってパンを喰っている光景はほとんど見かけない。
女はそれを我慢できないのだ。
それが道路という公共の場所であろうと女はパンを食べずにはいられない。
そのためにわざわざ持ち出したパンなのだ。
街角でパンを食べるのは女の習性なのである。
ダイエットに敏感な女性が人の目を忍んでパンを食べる時、少なからずそこには背徳感があるであろう、そんな中で自分への言い訳として少しでも食感の軽い物をと選んだのがパンなのだ。
その矛盾。しかし矛盾こそ女性の最大の特徴である。
すなわち街角でパンを食べる女性は、至って女性らしい女性なのである。
そんな事を知ってか知らずかモソモソとパンを食べる女性を横目に、街は今日も賑わって暮れて行く。