2014/12/12

酒場

 そんなに酒が好きなワケでもないのだが、何かと酒場に縁がある。
付き合いだったり仕事だったり、もちろんたまには酒が飲みたくなったり飲まないとやってらんなかったり。

 水商売をやっていた時期もあり、バーテンのバイトもやったりしてたので初歩的な酒の知識はあったりするのだが、それでも酒好きとは言えないくらいで、第一すぐに酔っ払ってしまう。

 酔ってもヘラヘラしてるか眠ってしまうくらいなので害はないものの、水商売の頃なんかはやはり飲む量も多いので、真っ直ぐ椅子に座れなくなって床にへたり込んで椅子に寄りかかりながら接客してたり、閉店後に酔い潰れて店に泊まったりもざらにあった。

 時にはそんな醜態を晒しながらもなぜ酒の場が好きなのかというと、飲む事自体よりも飲みの場の雰囲気が好きなタイプで、やっぱりそこに居る人達が好きなのである。

 仲の良い友達同士でも、はたまた初対面でも、とりとめのない話をしたり馬鹿騒ぎをしたりは何かと楽しいもので、酒の場だからこそ許されるコミュニケーションでもある。
また、そんな人達を眺めるのも好きで、僕なんかはわりと隅の席からそういう人々を見ている事が多い。

 実はこれが僕の飲みの醍醐味で、これほど人間観察に適した場はない。
人は酔った時と寝顔に本性が出ると思ってるので、他人の、普段は理性や世間体で覆われて隠されている人間性を垣間見るのは非常に楽しい。

 酒によって開放された感情はとどまる事を知らない。
その時々の想いが爆発するのであろう、突如泣き出したり暴れたり、下ネタしか言わなくなったりキス魔になったりと、本当に人それぞれ。とっても個性的である。

 そんな剥き出しの人間性を酒の肴にするという悪趣味を遂行するためには、自分の飲みのペースはほどほどに、ホロ酔い程度が望ましい。
そのくらいの酔いだと他人が一層楽しく見える。
酔い潰れて自分が観察される側になるのは真っ平ごめんだ。

 それでも酒の勢いで人前で泣き出してしまった事もしばしば。
見苦しいのは確かだけど、妙にスッキリするものでもある。

 それにしても今より景気の良かった頃は、ホステス同士の酒の掛け合いの喧嘩や、オカマがドンペリのボトルで頭を殴られたり、ヤクザが店内に万札をバラ撒いたりと、乱痴気や修羅場もずいぶん派手だったものだが、最近はそんな光景はとんと見かけなくなった。
時代が変わったのか、単に僕がそういう場所で飲んでないだけなのか。

 少し寂しい気もするが、何にしろ酒は楽しいのがいちばんである。

 そして今日も、こっそり人間観察をするという名目で、人恋しくなって酒場に向かうのである。