ほぼ一日中、すなわち20時間ほど眠り続ける時がある。
と言っても20時間で一度も目覚めないかというとそうではなく、オシッコしに数回起きるけどあとはまた眠りっぱなし。
その間、もちろん食事もしないので20時間後に目覚めた時にはプチ断食状態である。
何がそこまで僕を眠りに駆り立てるのか?
むしろ何から逃れるために眠りに就くのか?
一つには体力的な弱さもあるとは思うのだが、それにしても眠り過ぎである。
眠れる森のおっさん。
おとぎ話ではお姫様は王子様のキスで目覚めるものだが、おっさんにはそんな相手も居ないのでひたすら眠り続けるのか。
眠っている間は電話やメールなどの連絡手段も絶たれるので完全に社会から断絶され、夢の中という第二世界へ逃避出来る。
これが僕には非常に重要な事なのだ。
自分では感じていないと思っていても人間社会に生きてるだけでストレスを受けるもので、知覚よりも身体が先に本能的にそれを感じ取るのであろう、知らぬ間に許容範囲を超えた時に強制的にスリープ状態へ自分を落とすのだと思う。
傷が癒えるまでの瘡蓋のように、繭の中に自分を閉じ込め守るシステムが僕の中で出来上がっているのだ。
大体、朝起きて夜眠らなければならないとか睡眠時間は8時間以内が良いとか、そんな物はけっきょく社会生活の都合に無理矢理合わせて作り上げられただけの幻想であり、本来人間はもっとそれぞれ単体が生物体として個性ある存在なのではないだろうか?
植物にも朝顔・昼顔・夕顔など時間帯によって住み分けを行っている物もあるように、人間だってもっと生活サイクルにバラエティーがあってもおかしくないはずだ。
ただ人間の場合、社会を皆で作り上げて生きていかなくてはならないので、歯車として規則正しく機能するために生き方にも雛型をはめ、その型から外れた者を淘汰し、適者生存して行くという方法を選んだ。
なので20時間も社会生活から離れて眠り続けるなんて有り得ない事で軽蔑の対象であり、もちろん淘汰される側なのだ。
それでも僕は眠り続ける。だって眠いんだもん。
以前、2日間起きて2日間眠る老婆が話題になったが、すごく自由だしパンクでいいなと思ったよ。
そうして自ら反社会的な睡眠活動を行っているつもりでも、やっぱり寂しいから社会で経験してきた事の断片を夢として見るのだろうか。
人間として再起動するまでの至福の時間。
本当にシャットダウンするようになるまでの処置としては適切なのかもしれない。