人は好きな動物に顔が似る、という持説がある。
要するに犬好きな人は犬に、猫好きな人は猫に顔が似てると思う!…というだけの事なんだけど、一般的にもペットは飼い主に似るなんて言われてたりしてるのであながち間違いでもないのではないだろうか?
かく言う自分は何の動物が好きかと訊かれると断然蛇で、そこそこの大蛇を飼っていたりした。(残念な事に先日亡くなってしまったが。)
そしてやっぱり顔が蛇に似てると言われるのである。
顔どころか性質もよく似ていて、全体に細長く冷淡に見え、人に懐かず群れず、何を考えているのか判別出来ないが機嫌が悪い時はすぐ判り、寒いとほとんど動かず、食事を摂る回数が少なくて消化が遅く、普段は大人しいが時折凶暴化する…など共通点を挙げればキリがない。
一体これはどういう事なのだろうか?
ひとつは一緒に居ると顔が似てくるという現象で、夫婦や恋人同士なんかが似てきたり無意識のうちに同じ仕草をしていたりという同化が、人と動物の間でも起こり得るのではないか?という事。
人間の顔の表情を形成する要素として視覚からの情報がどれほど影響があるのかきちんとは知らないけど、例えば憧れの人物の写真を部屋に貼って無意識下も含め毎日眺める事でだんだんその人にうっすら似てくるなんて事もあるらしいのでまんざらでもないんじゃないだろうか?
ただ、人間が動物を眺める事で表情に影響が出たとしても、動物が人間を見た時にそこまで顔に変化があるものだろうか?
飼い主に対して愛情があり共存関係にある犬や猫なら解らなくもないが、蛇なんてそんな感情はおそらく微塵も持ち合わせてないので相互に似てくるとは考えにくい。
ではなぜか?と突き詰めてみると、けっきょく人は無意識に自分に似たものを選んでいるのではないか?という事が考えられる。
自分に似たものが好き、すなわちナルシシズムの反映なのではなかろうか?と。
似てくるというよりは実は最初から似ているのだ。
これは何も動物との間だけでなく人間同士の関係でも言える事で、広範囲で提議すれば、趣味が合う人や服装の近い人と仲良くしたり、自分の話を聞いてくれる人や自分を肯定してくれる人を側に置いたり、そういうのも自己投影に含まれると思う。
人間は何時間でも鏡を見てられる自分大好きな動物であり、でもそれじゃあさすがに気持ち悪いし恥ずかしいから自分に似た動物や人物で自分の代用とする。
だから好きな動物と自分とは似ているのであり、そこに自分を映し出して眺めているのだ。
他の動物に比べヒトは人種や肌の色味の違いくらいで極端に種類が少ないのは、言い方を変えればヒト同士はとてもよく似ているという事でもあり、それはきっと自分が好きだからなのであろう。
自分の事が嫌いな僕も、好きな動物がいるうちはまだまだ自分を愛せる余地があるのかもしれない。