2016/02/11

例えば、AyaBambi

 AyaBambiという日本人女性二人から成るダンスユニットがある。

 以前、彼女達の既存のプロフィール文を要約して短縮するというちょっとした作業を請け負った事があって、情報としては少々古い物だけどせっかくなので概要代わりに引用すると。

 「Aya Sato + Bambi Satoによるダンスユニット。
振付はAya Satoが担当、オリジナルのAya Styleと呼ばれるジャンルで、シャープな動きとシンメトリックな構成が特徴。
その高いダンススキルとエッジーなルックスからなる独特の世界観で国内外のダンスシーンはもとより、アート、音楽、ファッションシーンからも注目を浴びており、椎名林檎(NHK紅白歌合戦、ツアー「林檎博'14」)やマドンナ(Brit Awards 2015)との共演もダンサーとしてだけでなく振付も担当し話題を呼んだ。
CMや広告、ファッション誌のモデルとしても、彼女達のセンスを総合的に活かせる媒体には出演している。」
(※現在、彼女達のダンスジャンル名は「AyaBambi style」と表記されている。)

 最近ではマドンナのツアーダンサーもメインで努め世界中を回り、まさに飛ぶ鳥も(その眼力で)落とす勢いの彼女達。
刃物のように鋭利なダンスそのものについては百聞は一見にしかず、生や動画で見てもらうのがいちばんなのだけど、ここでは敢えて文章で彼女達の魅力を自分なりに分析してみたい。

 …とは言ったものの、僕も彼女達のパフォーンスを生で観たのはたった2度だけであとは動画での閲覧だし、もちろん彼女達のプライベートを知ってるワケでもないので好きといっても直感的な「好き」であるのだけど。

 マドンナなどのビッグネームとの共演もホットだけど、何よりもまずは二人のペアとしての魅力。
双子のように相似しているかと思えば夫婦のように対比と補完が混在している面白さ。

 実際彼女達は同性同士で結婚しているペアでもあり(なので「夫婦」という漢字の表記は相応しくないのだけれど)、トイレ以外はいつも一緒という噂の仲睦まじさ。
同性婚という事でよくLGBT観点でクローズアップされがちだけど、何というか彼女達にとっては二人で居る事がすごく自然なんだろうな~と思う。無人島で二人だけで暮らしている子供達みたいな、二人だけの言語で話していてもおかしくないくらい。
キキララのように(そういえば僕はサンリオキャラクターではキキララがいちばん好きだ。)中性的で、似ているけど違ってて、違うけど似ている二人。
そんな二人が惑星のようにお互いの引力によってお互いを存在させている均衡の美しさはなかなか類を見ない。
ダシにコクと旨みを与える、昆布×カツオの黄金バランスのごとく相乗効果である。

 彼女達のルックスや振り付けの直線的・平面構成的なイメージは日本美術を思わせる。
切り揃えられた黒髪をはじめ、彼女達が醸し出すジャポニズム、オリエンタリズムは、ある意味一回りした物というか、西洋から見た東洋の感覚、今っぽく言えばCOOL JAPANってとこだろうか。
踊る手の形や無機質な表情は仏像みたいだし(舌をガーッと出したポーズは仁王像を通り越してもはやインドの殺戮の女神・カーリーのようだが)、その日本ぽさとデザイン性の高さが国内外のクリエイターを刺激するのだろう。そういった意味では山口小夜子のような存在でもある。

 ボディピアスやタトゥーなど、一昔前までは本当にアンダーグラウンドで今でも媒体によっては規制がかかるファッション文化が、近年日本でもメジャー化の傾向があるけど、日本は他の先進国に比べてそういった方面での発展が遅く何でもまずは海外がやってからという風潮なので、ピアス&タトゥー有りの日本人である彼女達が海外経由で逆輸入されて来た今、そういった水準の変化にも一役買っているだろう。

 ダンサー達の活動の幅も変わってきていて、モデルに代わりファッション誌を飾ったり広告に出演したりという案件が目立っている。その分ルックスも良くないと…というシビアな面もあるけれど彼女達は持ち前のファッションセンスと共にそれをもクリアしてハイブランドのモデルを務めたりもしている。

 今はダンサーだけでなく何のジャンルでもルックスが大事な時代なんだな~とつくづく思う。
もちろん中身も大切だけど、パッケージが美しくないと中まで見てもらえなかったり、逆に中身が空っぽでもパッケージが良ければ売れる場合もあったりと。
しかし世間とは欲張りなもので、その両方を兼ね備えてやっと初めて才能と言うようになった。
天に二物を与えられた人間の時代なのである。

 二物どころか汚物として産まれてしまった僕は、彼女達のようにスキルと美貌を持った人々を指をくわえて眺めているしかないのだが、パンがなければお菓子を食べればいいように、自分の事が嫌いなら自分以外の人を好きになればいいのだとようやく気付いたので、最近はわりと幸せです♡