【この記事の推奨BGM:UKAWANIMATION! feat. 石野卓球×萩原健一《惑星のポートレイト 5億万画素》】
先日、フォトグラファーの作永裕範くん( http://www.sakunagahironori.com )の作品撮りのモデルをしてきた。
作永くんとは、以前展示会のショーモデルをした時にそのランウェイの撮影をしてくれていて、ショーの後に声をかけられ名刺を渡されて作品撮りをしたいので連絡して欲しいと、ただそれだけのアッサリした出会いだった。
にも関わらず、いざスタジオでセッションしてみるととても呼吸が合う。
ホームページを見るとファッション系の綺麗なポートレイトが多いので、僕もいよいよ間違って綺麗系デビューか!?と思いきや、用意されたスタイリングとヘアメイクはバリバリのイロモノ。はい、正解。
「眉毛要らなかったら剃っていいよ~」と言ったら、「じゃ、いっちゃいましょう!」と。いいねぇ~そのノリ。なので今月は眉毛がありません。
全体にネイティブ・アメリカンやアフリカ狩猟民族のようなトライバル感とメンズパンクファッションをミックスしたようなスタイリングを2ルック、僕も年を取って最近は顔がインディアンみたいになってきて妙な味が出つつあるところだったので、丁度良いというか、あ、解ってるな~っていう感触。
この感触って非常に大事で、しっくりくるというか、腑に落ちるというか、パチッとパズルのピースがハマった感。
ヘアメイクさんもスタイリストさんも初対面だったけどそれですごく安心したし、身を任す事が出来た。
(パズルのピースが全くハマらない現場もあり、そんな時はテンションだだ下がりになる事は言うまでもない。)
なのでこちらも特に細かく説明されなくても作永くんが撮りたい画が解ったし、自分に何が求められているかが解ったので、あとは期待に応えられるようカメラの前で動くだけ。
もちろんスカしたポージングなんかは求められず、かかってた音楽を爆音にしてもらって、カメラを睨み付けて歯を剥き出しては威嚇し、暴れ、編み込まれた髪の束を振り乱し、時に暗黒舞踏のように動いたり、もう寝そべっちゃったりと、やりたい放題。
それを作永くんがすっごく嬉しそうに撮るという。
カメラマンとモデルの間には奇妙な関係が生まれる。
シャッター音の合間にまばたきをして呼吸を合わせ、レンズに見られながらレンズを見る。
相互のエネルギーが行き交う独特の空間。セクシャルですらあるような。
普段、初対面やそれほど面識がない間柄で何らかのセッションをする際、始めはお互い様子見ですぐに自分の開放スイッチを入れる事はないんだけど、今回はすごく自然に、スッと世界に入れた。
高校時代、デザインの学校だったので写真の授業もあって、その頃はまだフィルムで撮って印画紙に焼いて暗室で酸っぱい匂いの現像液に浸して画を浮き上がらせるという、それはそれで趣のある作業をしてたけど、今は写真もデジタルで撮ってすぐPCモニターで確認出来るので、一連の流れが終わる度に軽く皆でチェックするのだが、写った自分を見て思ったのは、
"自分は、自分が思ってるよりも醜いし、自分が思ってるよりも美しい"
という事だった。
容赦なくコントラストの強い、乾いたようなその写真で改めて見る事で自分の容姿の欠点が浮き彫りになって自分の予想外の醜さにガッカリしたり、かと思えば自分でもビックリするくらい横顔が美しかったり眼差しがカッコ良かったり、自分てこんな風にもなれるんだ!?という驚きがあったり。
モデルをした自分からはその画は客観であるけどカメラマンからは主観だからだろうか、不思議なものである。
あとは偶然の産物がけっこうあるのも面白い。ちょっとしたブレやフレームアウトが逆に良かったり、激しい動きの一瞬を切り取る事で出る臨場感など。
生の人間が動いて生の人間がそれを撮るからこその誤差の醍醐味。
熱く、でも淡々と行われた、とても人間臭い撮影でした。上がりが楽しみだな~。