他人の人生が眩しいのでサングラスをかけてます。
夏や海や日焼けやビールが似合う人を眺めては、いいな、と思う。
僕だって決してそういうのが嫌いじゃないんだけど、如何せん似合わない。木陰でアイスコーヒーでも啜ってるのが精一杯。
太陽よりもミラーボールやネオンの下の方が光合成出来る人間というのも居るもので、あまりに炎天下に出歩いたりすると目眩や息切れがしてしまう。
いつからそんな風になってしまったのだろうか?
子供の頃はそれこそ真っ黒に日焼けして海やプールで泳いだものだけど、いつからかまるで太陽を避けるように昼に眠って夜に活動し、世を憎んで生きるようになってしまった。
いつの間にか大切なものを失った。
夜行性になると昼の喧騒や当たり前のような健全さが過剰に思えて煩わしくなってくると同時に、それこそ白昼夢のようにボンヤリとまるで自分とは全く関係ない事柄のように感じられる。
強い日射しや遠くから聴こえる子供達のはしゃぎ声も、何だか夢の中のようで現実感がない。
夜になって辺りが暗くなるとようやく意識がハッキリして途端に周りがクリアに見えてくる。人工の光の方が物をハッキリ捉えられる眼球なのだろうか。
月でも街灯でも星でもネオンでも、何でもいい。太陽ではない何か。
青かった空も黒く塗り潰されてスタイリッシュだし、このくらいが僕には丁度いい。
夜風はいつもとても心地好くて完璧だけど、それでもやっぱりどこかで青空と入道雲に憧れる自分も居る。
いつの間にかなくしたものと、それをまだ持っている人と、戻れない人生と。
それでも毎年夏は来る。
焼けた肌に白い歯を覗かせてクシャクシャの笑顔で夏を満喫している貴方の首筋に噛み付いて、その爽やかな生気を少し吸い取る事で青白い僕もちょっとだけ元気になって、そしてまた昼と夜に別れてお互い生きて行く。バイバイ。