昔から、仲は良くてもなぜか距離を置かれるタイプの人間なので、持たれているイメージとは裏腹にさほど社交性もなく、遊びや飲みに誘ってくれる友達はほとんど居ないし、食事もいつも独りで済まして大概は単独で行動している。
格好良く言えば一匹狼なのだが、狼ほどは格好良くないので一匹ミーアキャットくらいの。
誘ってもらえないのが寂しいのならば自分から誘えばいいのだが、そうすると「緊張する」とか「一対一だと何を話していいか分からない」などと言われて軽く引かれ、結局うやむやにされて余計に寂しさが増すだけで。
なので特定の誰かとつるむという事がないし、もちろん親友と呼べる人間も居ない。まして恋人や伴侶のような最もプライベートな関係などはおそらく生涯持てないであろう。
かといって毛嫌いされているかといえばそうでもなく、逆にわりと人気者だったりもするのだが、例えばミッキーマウスみたいなもんで、登場すると面白がられてキャーキャー言われてもそれ以上の個人的な付き合いは誰も望んでないという。
キャラクターとしては好かれるけど人間として愛されない、この虚しさ。
思えば子供の頃からずっと、どの集団とも仲は良いけど、どの集団にも属してこなかった。
まるで遊牧民のようにいろんなグループに顔を出し、来ても拒まれず去っても追われず、それはそれで楽しいのだが。
よく優しいとも言われるけれど(そして枕詞として「見た目に反して」が付随する)、いろんな人に優しくしたところでいろんな人から優しくされるワケではない。
多分僕はみんなの事がそれぞれ平等に好きなんだけど、相手からしたらそれは平等に分割された愛情の小片でしかなく、取るに足らない物なのだ。
クッキーを丸ごともらったら嬉しいけど、割れたクッキーのカケラなんてもらっても誰も嬉しくない。
100%を与えない者に100%の愛は返ってこない。
なぜ僕は相手に100%をさらけ出せないのか。
育った環境から来る人間不信と、人前で感情を露わにする事を美徳としない性格が邪魔をして、でも「親しき仲にも礼儀あり」だし、それくらいの距離感が普通だと思うんだけど。
気付いたら、独り。
小さな島に泳ぎ着いて上辺は楽しく過ごしても、無意識に築いてしまった壁に隔たれて真から心を開く事も理解される事もないまま、自分の居場所ではなかったと諦めてまた別の島を求めて泳いで泳いで泳いで、もういい加減疲れて呼吸も出来なくなり溺れ死ぬ寸前のミーアキャット。
溺死する前に一瞬見る夢は、さぞかし友愛と信頼に満ちていて、親密な絆で結ばれ輝いているだろう。
海底に、ミーアキャットみたいに何かを求めて首を伸ばしたままの死体があったら、それは僕です。