2017/10/11

「おかえり」

 部屋を出て大通りに到るまでのちょっとした路地の脇に勝手に小さなパイプ椅子を置いてほぼ毎日、日中のまだ暖かくて明るい時間帯に座ってたたずんでいる老人が居る。

 小汚い格好で実際近くを通るとすえた臭いがする時があるもののホームレスではなさそうで、ただのホントに暇な爺さんという風情でタバコを吸いながら何が楽しいのかボーッと行き交う人々を眺めたりしている。

 それでも子供のような人懐っこい愛嬌ある顔でニコニコしてたりするので特別嫌な感じもせず「あ、今日も爺さん居るな~」くらいの感覚だったのだが。

 最近その爺さんの前を通ると爺さんに「おかえり!」と言われるようになった。
最初はただの老人の気まぐれで機嫌が良かっただけとかそんなんだろうと思っていたら、毎日通る度に言われるようになり、しかもよくよく観察してみると他の人には声をかけていないのだ。

 なぜ?

 という疑問だけが残るし、もともと知ってる仲でもなく応対するほどの事でもないかなと、挨拶されてもチラッと視線を投げるくらいですぐ通り過ぎるのだが。
よくは解らないが認識はされているようだ。

 でもね爺さん、「おかえり!」と言ってくれるのはいいんだけど、いつもこちらが帰って来た時じゃなくて出掛ける時なんだよな~。
労ってくれるのであればそこは「行ってらっしゃい!」なのだが。

 もうなんか猫みたいなもんだと思われてるのだろうか?

 今度「ただいま!」と返してみたら、猫が喋ったと驚くだろうか。