2019/11/08

大団円:前編

 フリーランスとして俳優活動をする時が度々あり、たまにオーディションサイトなどを覗くもピンとくる案件がほとんどなかったりそもそも年齢的に弾かれたりが多いのだが、そんな中で唐突に「ジュラル星人アンサンブル一般募集」というのがあって、イロモノ専門で人間以外の役も多くやっている身としては食指が動き、閲覧するとどうやらアニメ『チャージマン研!』の舞台化という事で、チャー研についてはタイトルと“ヤバいアニメ”だという噂だけは知ってたものの実際に観た事がなく、検索するとYouTubeにニコニコ動画の「弾幕」と呼ばれるコメント付きで全話アップされており一話が5分ちょいなのもあってサクサクと観てしまって、ああ、コレは“ヤバイ”わと。

 実は12月に一本舞台が決まった後だったので、それが何年かぶりの舞台だしアンサンブルだったら楽そうで舞台の空気を思い出すリハビリとして丁度いいかな〜なんて思ってオーディションに応募し一次の書類審査を通過、二次の課題が「あなたの武器を見せてください、そしてその武器をワークショップ形式で他の応募者に教えてください」という変化球で、めんどくせぇタイプのヤツだわ〜!と思ったものの、そこは何事も楽しむ精神の雲平さんなので自分の武器って何だろ?と考えつつ、舞台のオーディションだからきっと殺陣やダンスなど動くもののワークショップをやる人が多いだろうからと差別化を謀って実施したのが…!

 自分の武器は観察力だけどその場で披露するのが難しいので、では観察力があると何が出来るかという事で自分で描いた絵を見せ(わたくしこう見えて先天的に絵が上手いのです)、ワークショップでは本当はデッサンからやりたかったもののそんな時間はないので、きっと他の応募者は舞台役者の若い男の子が多いだろうと予想し自分なりの「役作りにおけるメイクの仕方」の中から大切かつ簡単な「眉毛」について教える事に。
 事前のメールで二次オーディションについての質問はNGとあったものの道具を人数分用意したかったので何人組でオーディションを行うのかだけ問い合わせ、アイブローペンシルと鏡をそれぞれ人数分購入。

 当日は案の定若い男子ばかりで化粧なんてした事もない子も多く、そんな子達の前でまずはカルロス・ゴーンの写真を見せ、この人のこの強烈なゲジゲジ眉からどんな性格を想像するかを言わせ「頑固そう」とか「気難しそう」とかの回答を引き出し、ではカルロス・ゴーンがこの眉ではなかったら?とカルロス・ゴーンに槇原敬之の垂れた太眉、石原さとみの一文字眉、叶恭子のつり上がったアーチ型の眉をそれぞれ合成した写真(もちろん事前に自分で用意)を見せ、眉毛の違いにおけるイメージの違いを説明、眉毛を変えるだけで性格を変えて見せる事が出来る、内面の役作りをいくらしても外見に反映されてなければ観客に伝わらないという事を滔々と話し、では実際に眉を描いてみろと。しかし最初から癖のある眉は難しいのでまずはオーソドックスに美しく描くのを目的に眉を描く際の黄金比の資料とともに眉毛を描かせるという。しかも偉そうに眉について講釈垂れてる自分は眉全剃りっていう。

 みんな鏡見て眉描くだけの大変地味なワークショップになりました。

 そして使用した鏡とペンシルと黄金比の資料はセットにして、家で練習出来るようにと男子達にあげるという太っ腹。(鏡とペンシルは100円ショップで買ったし資料は白黒コピーなので大した腹ではない。)

 数日後、制作さんからオーディション合格の電話が。その時に一ヶ月の稽古全部になるべく出て欲しいと告げられ、ジュラル星人のアンサンブルなんて本番の3日前くらいに合流して「こことここで出て、あとは奇声をあげながら研に殺されてすぐ捌けてください」くらいのもんだと思ってたので、えぇ〜けっこう大変な感じ?まあいいや!と了承したのが楽しい地獄の始まりだったのだ…!

続く