2020/10/29

禍中の研:後編

 さて今回もジュラル星人とその他キャラクターをアンサンブルとして演じてきたけど、特筆すべきは後半のいわゆる“本編”に登場する新型コロナウイルス役。

 本編のパートは脚本が前作を踏襲していたので、前回に牧ジュラルこと牧亮佑くんが演じていたアイアン星がコロナウイルスに変更された形だったんだけど(牧ジュラルは今回お休みで、映画「今日から俺は!」でヤンキーに、同じくお休みの坂下陽春ジュラルはミュージカル「忍たま乱太郎」で忍者として各々人間に化けて活動中〜。)、その牧ジュラルによるアイアン星の演技が絶妙に素晴らしかったので同様の役作りの方向性では敵わないなーっていうのもあったし、色々と試行錯誤して演出家と相談しながら作っていったんだけど(意外とマジメに取り組んでんのよ?)、最初はコロナは人類にとっての完全悪なので観客全員に嫌われるような感じがいいかなという演出案だったので、オラオラキャラや変質者キャラをやってみたり「桃太郎電鉄」のキングボンビーのイメージとか、本編パートの稽古毎に様々な雰囲気でやってみてたけど自分的にも演出家的にもいまいちシックリ来ず。

 う〜ん…な日々が続く中、もしかしたらコロナ自身はもっと悪気がない感じでもいいのかも?という話が出た辺りで幼児性を押し出してやってみたのが本番の原型になったんだけど、幼児っていってもやってるのはおっさんだから紙一重っていうか、見方によっては知的障害者をバカにしてるみたいに思われたりしないだろうかと考えあぐねていて、しかもちょうどプロデューサーが稽古場に来てて側を通った時に「コロナさぁ〜」って呼び止められたから、あ、やっぱり怒られるかなと思ったら「すごくいいよー!」って言われて逆に驚いたという。

 なのでそこから本格的に子供っぽくシフトしていって2歳児のつもりでやってた。
2歳ってまだきちんと喋れないから意思の疎通が難しい上に、歩けるようになっていきなり行動範囲がすごく広がるから子育てする側としてはすごく大変な時期で、もちろん僕は子供も居ないので育てた事もないけど、子持ちの友人いわく2歳児はまさに宇宙人みたいだと。そしてこう見えて子供大好きなのでよくSNSで他人様の子供を愛でてるんだけどホント面白くて。前に友達の子供がオナラした時に自分のお尻から何かが落ちたと思ったらしく周りをキョロキョロ探してて、その発想はスゴイな〜とか。何に笑って何に泣くかも予想外だし。
2歳くらいの子ってまだ頭が重くて足は外股だからヨチヨチした歩き方だし、一度テンション上がるとアドレナリンでずっとキャッキャ言ってて、しかも同じ事を何度も繰り返し面白がって大人の方がよっぽど疲れてしまうほどなんだけど、今回のコロナの役作りにはそういった“テンション上がってる時の2歳児”を応用して、パスカル光線のワチョワチョを食らった時は“自分で頭振って目回るのが楽しくてずっとやってる子”、アルコール除菌スプレーを噴霧された時は“梅干しとかレモンなどの酸っぱい物を食べた時に子供がするイイ顔”をイメージ。
2歳なのでまだ善悪の区別は無く、新型コロナウイルスってまだ産まれて間もないワケだから良いかなと。なのでコロナ本人としては全く悪気はなくただみんなと遊びたい、というかもう一緒に遊んでる気になっている、一応ちょっと相手の話を聞いたり何となく楽しそうとか悲しそうとかは察知しても根本的に内容は理解してない、基本的に好奇心旺盛。

 しかしこれがわりと永遠に出来る演技というか、自分の頭の中を2歳児に退化させれば良いだけなので一度2歳児になってしまえばそのままずっと居られる感じ。セリフは無いけど毎回2歳児に成りきり過ぎて思わず「うきゃきゃ!」とか喃語が小声でこっそり漏れてしまっていたのは秘密。
そんな風に毎回ただ楽しくヘラヘラしてただけだったんだけど、楽日に研1号こと古谷大和さんから、研が本編で現実のコロナ禍への様々な思いを毎回アドリブで吐露するシーンについて「昼はまだふざけるけど、夜の回はしんみりさせたいからコロナも合わせて欲しい」とリクエストがあり、あぁ、そういえばそれまで全部ただ独りよがりでやってたな〜とこの時始めて気付き(古谷さんはもしかしたらもっと前からそうして欲しかったのかも)、でも「雲平さんのコロナの感じたままのリアクションで良いんで」と言ってくれたのでシーンに深みが出るよう夜までに考えておこう!と思ってたんだけど、古谷さん昼の回ふざけるって言ってたのにそのシーンで研が振り向いた時に目が合ったらもうすでに涙目でさぁ〜!

 なのでその昼の回と、その後の夜の回はコロナも少し演技を変えました。最終公演である夜の回は除菌されて死ぬ(?)直前に研を一人一人見て研のキメポーズを真似してて。本当は最期に「けん、ばいばい☆」って言いたいなって思ったけど飛沫防止のためセリフとしては言えず。

 個人的にももっとやりたかった事もあって、チャー研のコロナは現実とは違って太陽コロナから発生して宇宙から飛来したウイルスという設定だったので、もっと宇宙人ぽく尖ったエルフ耳を付けようとしてたんだけど、いくらテープで固定しても汗と動きで取れちゃうからギリギリまで粘ったものの最後の稽古でも取れてしまったので断念。あとは子供ってシールが好きで自分の顔とかにもシールを貼ってたりするのが可愛いなと思ったので顔中に星柄などのシールをペタペタ貼ったりもしてみたけどこれも汗で落ちて舞台上に残ってしまうので諦め。
裸にしたのは、まだコロナの性格が決まってない頃に、単純にジュラルの赤いスーツが見えるのが嫌だ(なるべくジュラルと区別したい)なと思ったのと、何となくコンテンポラリーダンサーみたいにヌーディーな見た目だったら面白いかなって思って裸を提案したものの、ガチな裸だとさすがに作品的に違うかな?と(個人的には素肌の裸にバレエダンサーが着用する肌色のTバックのみとかが良かったんだけど。足も裸足で。イメージ:森山開次)、裸に見えるボディースーツ(私物)を衣装合わせに持って行くもそれだけだとまだエグイって事で紫のブルマを穿いて、靴もちょうどプロデューサーのスリッポンが肌色に近い物だったのでそれをお借りして。(しかもサイズがデカかったから早替えの時にジュラルの手袋を詰めて履いてました。各部署に謝罪!)
後から気付いたんだけど「時限爆弾電送テレビ」のロボット・ブラックも、あとは魔王様も紫のブルマなんだよね。どんだけ紫ブルマ好きなカンパニーなの!

 さて公演が全て終了すれば現実世界に戻るワケで、今回はコロナ対策で前回のように打ち上げも無く「お疲れさまでした〜」と一人一人ポツリポツリと帰って行くスタイル。前回の打ち上げはみんな号泣でそれはそれは素敵な打ち上げだったんだけど。なので逆に明日もまだ公演あるんじゃないかっていう錯覚もあって。
そんな中で古谷さんにお疲れさまでした、今回もお世話になりましたと挨拶した時に、すっごい爽やかな笑顔で「お疲れさまでした!今回は働き者でしたね。」って言われて、あんた!座長としていつも周り見てて自分だって大変なのに場を仕切ったり、ちょっとでも時間があるといつでもダンスの練習してて、本番中も他の仕事も入ってたり楽屋でガウン着のまんま横になって仮眠してるのも見掛けたし、そんな誰よりもいちばん疲れてるであろう人が、よくそんなキラキラした笑顔で他人を労えるな!?…って、雲平さんはそこで泣きそうになりました。

 次回続編!?も発表されたのでまた来年かな?皆様にお会い出来るよう、みなさんも「手洗え、距離を保て、密を避けろ、ディスタンス〜♪」で、元気で居てね〜!

 (もっと舞台公演における現実のコロナ禍についても書こうかと思ってたんだけど(公演やるって決まったの多分ギリギリとか、キャスト&スタッフのPCR検査代だけでも予算持ってかれるよな〜とか)言い訳がましくなったら本意ではないのと、舞台も他のエンタメも何でもそうだけどもともと何かしらの制約は絶対に有る中で如何に最上の物を作るかがクリエイティブという事だし、チャー研は特に花火みたいなもんで無事にパァー!っと打ち上がって楽しんでもらえたらそれで良いモノだからね。)