2021/05/31

『逢燦杰極譚』

 2021年5月29日(土)に、なかのZERO大ホールで行われた芸能山城組のAKIRA公演『逢燦杰極譚』(あきらじぇごぐだん)にコーラスで参加させてもらった。
芸能山城組には「祭仲間」(正規の組員ではないが諸々手伝いなどで参加するメンバー)として前回のケチャまつりに参加して以来、その時の様子はコチラ。

 『AKIRA』はもう説明不要なレジェンド作品だし、そのアニメ映画の音楽を担当した芸能山城組の劇伴も国内外でいまだ人気、そのAKIRA楽曲にスポットを当てたそんな栄えある公演に自分も参加出来るとは、人生って思いも寄らない事が起こるもんで。

 年末から3月までの約3ヶ月間入院していたのだが、ちょうど退院して体力も整った頃に合唱メンバーとしてお誘いを受け快諾、男子最高音パートとして稽古に参入。公演自体がコロナ禍の緊急事態宣言を受けて去年から2度の延期、稽古も感染対策を徹底して手指の消毒からPCR・抗原検査を実施。人と人との間隔を空けなければならないので合唱では隣の人の声や他のパートの声も聴き辛いし、楽器と合わせての稽古はほとんど出来ずでなかなか難しかったけど、その都度改善を求めて稽古をし、本番会場のなかのZERO大ホールは音響設備が凄くて壁にスピーカーが埋め込まれていたり巨大な反響板で囲われてるのでまた声の響きが違ったり楽器の音量に声が負けてしまったりで、会場に入ってからも調整を繰り返す。

 楽譜の暗譜はもちろん、今回は陀羅尼(だらに/サンスクリット語のお経を意訳せずに原文をそのまま音読したもの)を使用した曲が2曲あったのでそれを憶えるのが一苦労!寝る前や街を歩きながらブツブツと経文を唱える怪しい日々。

 そして公演タイトルにもあるように今回は巨大な竹を使った楽器・ジェゴグがフィーチャーされてるんだけど、ホールで増幅されたジェゴグの音がまた凄い!今まで僕はジェゴグの音色には雨、特に熱帯雨林のスコールのイメージがあったんだけど、重低音は地底から吼えるようだし高音は光の囁きのようで、地獄から天国まで網羅する音。さらには倍音で人の声のような音が聴こえる時もあり、とても不思議だった。気配がある楽器。
低音で使われている竹は抱えるほど大きいので搬入なども大変なんだけど、かぐや姫何人分だろう?ってくらい竹を運んだよね。

 さて本番。前日の仕込みも含めバタバタしつつも適度な緊張と、それにも増して公演を一年待ってくれたお客さんも大勢なので期待に応えたいという意気込み。元々は1日1回公演の予定で、満席で完売してたものを劇場の客席を50%にしなければならないという国の方針でキャパを半分に減らした分、2回公演に。キャンセルがあった分を追加販売するもそれも完売、実質満席のお客さんに囲まれるという最高の環境。
それに応えるべく音響も山城組の組頭・山城祥二先生自らジェゴグの竹一本一本までサウンドチェック、ホールの特性を最大限に活かした音と声を届けられるようセッティング。
AKIRA曲のみならず、漫画原作者の大友克洋氏がこれを聴いて山城組に音楽担当を打診したという所縁のある曲や、ジェゴグをお客さんの前で解体して仕組みの説明をしたりも。

 一言で合唱といってもこれもなかなか奥深く、基本的な声の出し方を始め、曲ごとの表現手法の違いや、舞台上での立ち振る舞いも含めてけっこう多くの要素があって稽古で教わった事を一つ一つ思い出しながらも本番ならではのエクスタシーを交えながら挑む。
合唱の醍醐味として、自分の声が完全に周りに溶けて自分の声が自分のものじゃない感覚になるという瞬間があって、これはケチャも同じなんだけど、同化する面白さも味わえたりと。
情感を乗せるのは当たり前なんだけど自分の情感だけが一人歩きしてしまうと周りと合わなくなってしまったりと難しさもあったけど(稽古中に「金田」のラッセラ〜を「暴れすぎ!」と言われたり)、全体にはのびのびと歌えて楽しかったな。
「金田」のラッセラ〜の祭感、「クラウンとの闘い」の悪漢的息遣い、そして「未来」の崇高なレクイエム。それぞれを演者として味わえたのはすごく貴重な体験。

 そして何よりお客さんの大拍手!すごかった。こちらが感動したもん。昼の部ですでに拍手の嵐だったので夜の部では急遽アンコールで「金田」のショートバージョンを。それでも拍手が鳴り止まずカーテンコールも。皆さん本当に楽しんでくれたんだな〜って嬉しかった。本当に、ありがとうございました!
今回AKIRAマニアはもちろん、芸能山城組マニアや音響マニア、ジェゴグマニア(いるのか?)も深くマニアックに楽しめる内容だったと思います。そして僕は陀羅尼マニアになりつつ…!