2020/10/23

禍中の研:前編

 去年に引き続き、LIVEミュージカル演劇『チャージマン研!』の第二弾(R-2)にジュラル星人として出演させてもらった。いわゆる“コロナ禍中”での舞台興行である。
(前回の模様は http://overdosetelegram.blogspot.com/2019/11/blog-post.html を参照してちょ。)

 コロナ云々については後述するのでまずは雲平ジュラルの本番期間のルーティーン、中でもいちばん忙しい日替わりエピソード「ガールフレンドが出来た」回に密着!

 マスク姿で劇場到着するとともに入口で手指の消毒と体温測定、各楽屋に挨拶しながら自分の控え室へ。といっても今回は感染予防のための密避けで楽屋も人数制限があり、見事そこからあぶれてしまった雲平ジュラルの控え室は…廊下!もはや部屋でもない場所にテーブルと椅子が設置され鏡が置かれているのだがテーブルの目の前はなんとエレベーターというスリル満点の控え室。
近くのコンビニで適当に買った食事をついばみながら、廊下は薄暗いので演出部さんにお願いして借りたLEDライトの明かりでベースメイクを進めていると間もなく返し稽古の時間。

 ゲストさんが来る回はその段取りの返し、あとは殺陣やアクションを毎回おさらい。一汗かいたところでまたメイクの続きと小道具のプリセット(使って移動した物をまた最初の位置に戻す事)などを同時進行。しばらくすると制作さんから開場のアナウンス、原作アニメの劇中曲に勝手に歌詞を付けたディスタンスの歌がしつこくループしだす。

 永遠に繰り返されるその歌が始まると、あぁ、もうこの時間が来たか…劇中でお客さんに「開場中トラウマになるくらいループしていたあの歌を思い出せ」なんていうセリフがあったけどトラウマになったのコッチだわ〜と思いつつ筋肉痛のしんどい身体に鞭打って立ち上がりマイクのヘッドセットを付けて衣装を装着。

 ジュラル星人達は開演15分前からステージ上に登場し賑やかしみたいな事をしているのだが、更にその10分前にはキャスト全員が集合して円陣を組み日毎に誰かが音頭を取って気合い入れをする儀式がある。掛け声はもちろん「チャージング…GOOOOOOO!!!!!!」で!
そこで一気に喝を注入し、各袖口に別れて一足先に待機するジュラル達、そして舞台監督の合図とともにステージ上へ。

 去年の公演を踏まえたお客さんが多いようでこの時点ですでに手やペンライトを振ってくれる人がたくさん。嬉しいですね〜!今回は飛沫防止徹底のため歌やセリフも口パクだし、去年のように自由に喋ったりは出来ないもののジュラル同士でワチャワチャしたりお客さんと無言のコミュニケーションを取ったりしてるうちにシレッと開演。
魔王様による口パク宣言の後に始まる怒濤の口パクオープニング主題歌。去年はあんなに「一緒に歌え!」と煽ったくせに今年は「絶対に歌うな!手拍子で盛り上げろ!」とずいぶん勝手なものだけどノッてくれる皆様ありがとう〜!

 主題歌を終えてからが一気に忙しい雲平ジュラル。
捌けたと同時にメイク室前のスペースまで走り込んで衣装さんに手伝ってもらいながら「ガールフレンドが出来た」のキャラクター・みゆきの衣装に早替えをして、メイク室でウィッグをONしてもらうと同時にリップを塗り、左肘の擦り傷をファンデーションで隠す。僕はマイクの機器を右腰に付けているため倒れたりするシーンではその精密機器を庇うため常に身体の左を下にするようにしてるので特に左肘にダメージが大きく、「ガールフレンドが出来た」以外の回では絆創膏とサポーターでガードしてるんだけど、みゆきの衣装はノースリーブで肘が見えるのでそれも出来ず、しかも同じ箇所を何度も擦り剝くので全く傷が治らずジュクジュクした傷の上からファンデーションとベビーパウダーを塗ってササッと誤魔化して舞台袖へ。(テーピングで隠しても汗で剥がれ、その他の膝のアザなどは予めメイクで隠してるんだけどどうしても落ちてくるし腕の怪我は目立つので直前にカバー。)

 「ガールフレンドが出来た」の回では4人の研達にとりあえずまず4回自転車で撥ねられるんだけど(そしてまた肘を擦り剝く)、その後のシーンの研達が非常〜に自由過ぎてとんでもないアドリブをかましてくるのでとっても大変。ブーツやパンティーを剥ぎ取られたり、お姫様抱っこをされたと思ったら思い切りグルグル回されて目は回るしウィッグが取れそうになったり、みゆきのウィッグと研のヘルメットを無理やり交換させられヘルメットも前後逆に被せられて前が見えないし、その後のシーンはウィッグ無しで出るハメになったりと。それはそれは翻弄されまくりで毎回何が起こるか判らず、自分の演技がどうこうよりもいかに研達に食い付いていくか、しかも舞台上なのでなるべく見映えが良いようにわかりやすいようにと精一杯になると同時に、研達のその奔放で力強いアドリブの数々の発信に感心しつつ(稽古時からだけど)、台風のようにこのシーンを終えて捌けたと思ったらすぐに裏の導線を駆け抜け次のジュラ松さんの出番近くの舞台袖へ!

 袖口に待機してるメイクさんにウィッグを取ってもらってリップを拭ってもらい、衣装さんには再度ジュラルスーツとその上へのジュラ松スウェットの着用をアシストしてもらう。この時は同じ舞台袖に六つ子が全員集合して衣装の早替えをしてるのでごっちゃごちゃ。全員準備が整ったら一斉に舞台上に出てスポットライトを合図にポージング。
アグレッシブなパラパラダンスを踊るも、みゆきを演じた時に集中力をほとんど使い果たして半ば抜け殻のようになっているので「ガールフレンドが出来た」の回がある時はどこかしら振付を間違えてしまうトホホな雲平さん。

 踊り終えたらまたすぐに裏を走りながらジュラ松スェットを脱ぎつつ、今度はジュ滅の刃の準備。今回はジュラル星人の腕が前回より長くなっていて手先も自由に曲げられるので普段は山菜のゼンマイのように手先をクルンと丸めているのだが、殺陣の振付上、それが刀に引っかかってしまうところがあるので真っ直ぐに伸ばして腕を短く持つという地味なカスタムをしている途中でいつももう出番。一度斬られて捌けたところでまた腕を元のゼンマイ仕様に戻し(密かに腕の曲線にこだわっていた。)、最終的に狼牙風風拳で心臓をえぐられて死亡、舞台上で死んでる時が唯一の休息タイムなのだが、またすぐ魔王様に蘇生させられてしまうので息が整う間もなくシラスの歌とダンスに突入。
お気付きの方も居るとは思いますがシラスの歌も実は去年と歌詞が微妙に変わってる部分が数カ所あって稽古中はそれがけっこうなトラップだったなー。(口パク用の録音をする前は実際に歌って稽古してたんだけど去年のバージョンが身体に染み込んでいたという。)

 シラスが終わってまたも息が上がってる中でアピールタイムに。ここでやっと地声で喋るためマウスシールドを着用。あんだけ口パクと言っておいてけっきょく声を出すっていう。このマウスシールドがまた焦って付けるとマイクのヘッドセットに干渉してしまったりして厄介なモノで。
去年はアピールタイムへの登板をほとんどしなかったけど今年はジュラルの人数も少ないので話をコンパクトにまとめて相変わらず喋るのみの芸でわりと多めに参戦。アピールタイムの時は宅飲みしてるみたいで楽しいんだよね〜。

 そして10分間の休憩に入るんだけど、雲平ジュラルは実はこの休憩時間中に後半のコロナウイルス役の時に着てる裸に見えるボディースーツをいちばん下に仕込んでおくという作業があるので実質休憩なし!(裸ボディースーツがかなりタイトなため着用に時間がかかりコロナ役直前での着替えだと間に合わないため。しかもアレ、私物。)その上からジュラルスーツを着て、なおかつチャージマンドリームの投票結果で魔王様がチャージマン研になった場合は魔王様が神回再現コーナーでやってた役の代役をやるので更にまた上から代役の衣装を着るという、まるでタケノコの皮のような重ね着地獄に。
再現コーナーへの出演が終わってお客さんがアニメを観ている間がやっと本当の休憩。衣装を焦がさないようにガウンを羽織ってタバコを一服。

 間もなく星くんのモノローグが始まると本編スタート。まずはジュラル姿で主題歌を、今度は全員生歌で歌い、曲中のアクションと激しめのダンスを終えて捌けると今度はすぐにコロナウイルスにチェンジ。
ここでも演出部さんと衣装さんが手伝ってくれて、まずはジュラルスーツを脱ぎ、下に着てた裸スーツの上からブルマを履いて襟足の髪をまとめ、頬にピンクのチークを足して、ウイルスの書き割り衣装を装着、水分も充分に補給。
ウイルスの出番前はロビーで待機してるんだけどここでいつも同じく待機中の魔王様と一緒に泉パパの歌声に酔いしれている。そしてウイルスなのに会場備え付けの消毒液で手指の消毒。

 コロナウイルスは喋らない役だしウイルスがマウスシールドしてるのもどうなの!?って事でシールドは無し、ヘラヘラしてるだけのようでけっこう運動量がある(というか実はいちばん疲れる)ので息も上がるし喉も乾燥するので研達にアルコールスプレーを噴霧された時のミスト効果に感謝してたり。
それでもハァハァ言いながら捌けてまたすぐ上からジュラルスーツを着用。水もガブ飲み。本当はチークも落としてメイクもリセットしたいところだけど、もうそんな時間というより気力がないのでエンディングはピンクの頬のままの雲平ジュラルでした。

 カーテンコールで一度捌けて法被を羽織ってダブルカーテンコールなのだが、これも去年は1.5倍速だったのに今年は1.75倍速に。なぜそこをバージョンアップさせるのか。速度が上がるとその分ダンスがキツイんだけど、隣で首もげるんじゃなかろうか?と思ってしまうほどキレッキレで踊ってる星くんが居るので雲平ジュラルも頑張る。
千秋楽はトリプルカーテンコールまであったけど通常はここで終演、汗だくでお疲れさまを言い合って各々着替えたりしてやっと一息つけるという。

 しかしこれが昼の回だったりすると数時間後にはもう夜の回なので、またディスタンスの曲が流れ始め、あぁ、もうこの時間が来たか…と重い腰を上げる事になるのである…!!!

続く